近い将来、長期入院の覚悟をしなければならないと思っています。A病院は基幹病院であり三カ月も入院すれば、病院側から転院の話を持ち出されるはずです。病院の規模に限って言えば、大企業、中小企業、下請け、孫請け、というように小さくなっていきます。そのことも気がかりでした。

少し前、病院の待合室で、佐山さんという方から転院先で奥さんが亡くなったという話を聞きました。息子が一人いるという自分と同じ家族構成だったこともあり、興味を引かれました。月日を重ねると、どの患者にも起こる、身につまされるような話でした。転院先の病院に行くと「うちの病院は看護師に毛の生えた程度の病院ですが、いいですか?」と言われたそうです。

実際にそういう言葉で言われたのか、それとも入院についての説明を受けた彼が、そういうふうに汲み取ってしまったのか、判断に苦しむところですが、大学病院で気管切開手術をしてから、自分の意志に反する転院を三回したと教えてくれました。

病院の収入である医療点数も入院期間が長くなれば落ちていくらしく、病状が安定したということで、施設への入所を奨められた時期もあったと聞きました。

「今思えば、入院した時に、病院任せでなく、自分で次の転院先を探しておくべきだった。迂闊でした」と反省されていました。

私は話の途中から、ただ頷くだけだったような記憶があります。妻を失い、寂しそうに言った佐山さんの言葉が、今でも浮かんできます。

一人息子は非正規の社員で、結婚はしていないと話していました。就職氷河期に大学を出て、遠く離れた都会で暮らしていて、妻が死んでからは、実家に立ち寄らなくなり、音信不通になった、と嘆いていました。