それは本人の違和感ですぐに補正できます。それ以外の所を忍耐強く、ベッドの脇で待ち、京子の身体の痛みが出た所を補正します。自然体で寝ている体勢になるように、時間をかけて微調整しながら探りあてる作業を数回繰り返します。
「もう少し右?」
私の言うことを、京子は耳で理解しています。でも声が出ないので、私は京子の顔を覗き込み、目が合うと彼女は深い瞬きを一回します。これは「YES」の合図です。
口パクでも「もういいよ」と言いますが、まだ読唇術に慣れていない私は、この言葉しか読み取ることができません。
それ以外の京子の意思表示は透明なパネルの五十音字表でやりとりします。相手の目の位置を探し、見当を付けて、指差し確認をして拾います。一字一字京子の深い瞬きの一回で必要な字が確定されます。もどかしくて、ひらがなばかりで句読点もありません。
「パ・ソ・コ・ン・ス・ル」
京子の言うパソコンとはカメラが付いていて,画面の五十音字表上を動く京子の視線を拾って、文書が作成されていく代物です。一字に対して予め設定された凝視の時間で、該当の字が拾われていくのです。手動とほとんど同じことをしています。
ただ、首が動かないため、画面の隅にある文字の場合、やぶにらみの状態で視線を止めなければならず辛くて仕方がないようです。そのため、あまり使いたがりません。
その点、手動式の五十音字表は、京子の目の動きによって、パネルを私が動かすことで対応できます。
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次回更新は12月20日(金)、21時の予定です。
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