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姉からメールが届いた。京子を心配する内容だった。近況報告を入れると長くなるので、パソコンで打ち出した手紙を送付することにした。
前略 ご心配かけて、申し訳ありません。早速、妻の近況をお知らせします。絶対生きて欲しい、自然死の苦しみが恐ろしいとの一心で、気管切開をして、生命維持装置を装着しました。最後には何が何でも生きて欲しいというのが、私の願いでした。
そのため、視界は病室の天井のみという日々の中に、京子を閉じ込めてしまった。何とか希望を見つけようとして、正直あせっております。私は病院に昼と夕方の二回行きます。退院後、家で二人の生活となれば、覚えなければならないことが山ほどあります。痰の吸引、胃瘻の扱い方、リハビリ及び便の処理の仕方等々です。十一時頃に行けば、看護師の手が少し空き、痰の吸引方法などを実践形式で教えていただけます。
私は生命維持装置を装着しても、今までの延長線上で自宅介護ができると軽く考えていました。
入院中の京子は、看護師がおむつ交換のために身体を動かすと、十分もすれば右腰が痛いとか、手の肘を少し曲げてとか、首の向きの修正を要求してきます。見た目に異常がなくても、わずかに腰から下がねじれているとか「くの字」に曲がっているのです。
目視で分からない「ひずみ」が、関節を境にしてあります。本人の違和感のようなものですが、実際にひずみの部分に痛みが発生するのです。
健常者があおむけに寝ていて寝返りを打てば、腰から足から首、頭まで正常な筋肉で繋がっているので、機械的にその向きに動きます。
ところが京子の場合、病気による急激な筋肉の弱体化に伴い、他人によって動かされた部分以外は、上を向いたままで、置いていかれるのです。
当然見た目で分かる部分は、看護師によって修正されています。ゆるい角度を付けたベッドから足元にずり落ちた身体を元に戻すと、布団との摩擦で背中の皮膚が少し、たぐれた状態になることがあります。健常者でもこれはあります。他人から見た目には背中の下になり、分からない部分なのです。それに近い状態もあります。
側臥位になると「ケンコウ骨、広ゲテ(肩が縮まった状態になっている)」と言います。