沖縄編
前進
「ありがとう。一緒にやろう。今の給料の2割増しで来てもらうよ」
「ほんとすか!」
「また出た、その言い方。嬉しいと出るんだな。お客さん相手の場合は気をつけてくれよ」
「分かりました、気をつけます。自分では意識したことなかったですが、そう言われると嬉しいときに出てしまうのだと思います」
「浦添営業所は僕以外に3名いるけれど、そのうち一番のベテランがもうすぐ辞めるんだ。実はその人が全体の9割を売っていたんだ」
「その人の後任ですか? それは荷が重いです。そんなに売る自信がありません」
「いや、車好きの亀井君なら多分大丈夫だと思う。それに9割といっても、浦添営業所は全体の売り上げが全国でも一番少ない部類だからしれている。目標はそれを2倍、3倍にして全国的に注目を浴びるくらいになることだよ」
「そんなこと言われるとますます心配になってきました」
「僕にいろいろとアイデアがあるから、なんとかなるかもしれない」
「多分大丈夫、なんとかなるかもしれない、って曖昧ですね」
「正直にいうと僕だって不安なんだ。でもここまできたらもう後がないなと思って、開き直った感じかな。これが僕に用意された道だと思うことにした」
「その前向きの考え方、いいですね」
「この挑戦を亀井君と一緒にやってみたいんだ。もちろんリスクはあるので無理は言えないけれど。引き受けてくれないかな」
「ありがとうございます。お引き受けすることは、先ほどお伝えした通りです。リスクがあることも今のお話でよく理解しました。よろしくお願いします」嬉しかった。こんなことがあるのか。これで一歩踏み出せる。