前進
東京本社の人事に電話して人員補充の相談をしたところ、本社か子会社から1人送ってもいいし、現地採用でもいいと言われた。前任者の給与分で2人若手を雇ってもいいという。自由度は高いが責任も重い。ここでどんな人材を採用するかは重要だ。
まず、山田さんと平良君に誰かいい人がいないか聞いてみるかな。でも沖縄の人はのんびりしている人が多そうなので、現地採用より東京営業所から誰か回してもらう方がいいかもしれない。
待てよ、東京の中古車屋でシビックTYPERを購入したときに世話になった亀井君はどうだろう。車が好きで、営業トークもしっかりしていた。何よりも車のことをよく知っているのがいい。
あのとき購入したシビックTYPER、吹田営業所時代は東京に帰ったときに少し運転する程度だったが、今回の沖縄転勤が決まったときに、東京から船便で送ることにした。今週末には沖縄に届く。届いたら沖縄の海を見ながら走ってみよう。
本社にもう一度電話して、他社からの移籍でもいいか確認を取った。問題ないということだったので、まず亀井君に電話してみることにした。あのときもらった名刺は確か東京の自宅の名刺ファイルに整理したはずだ。
早速、琴音に電話してみた。すぐに琴音が電話に出た。
「無事着いたよ。昨日はいろいろとありがとう」
「私も久しぶりにゆっくり話をして、買い物や散歩もできて嬉しかった。一泊延ばしてくれて、それもとても嬉しかった。安心できたのか、久しぶりにぐっすり眠れちゃった」「僕も嬉しかったよ。でも琴音がぐっすり眠れたのは、久しぶりだったので激しかったからじゃない? 疲れた顔して眠ってたよ」
「そんなこと絶対ない! でも、そんな冗談言えるくらい元気になったのが、本当に嬉しいわ」
琴音にそう言われて、少し目の奥が熱くなった。後悔の念を強く感じた。これからどうなるか不安だらけだけれど、自分のためにも、家族のためにも、沖縄で頑張らなくては。
【前回の記事を読む】「奥のテーブルでコーヒーでも飲みながら歓迎会のようなことをさせていただきます」言葉や態度から歓迎されていないと感じた。
次回更新は12月23日(月)、8時の予定です。
【イチオシ記事】遂に夫の浮気相手から返答が… 悪いのは夫、その思いが確信へ変わる
【注目記事】静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた