「お義母さん、子どもができました」と、報告したところ、
「そうですか。別に子どもは要らないんですけれどね。まあ、妊娠は病気ではありませんから、家事はこれまで通りやっていただきますよ」
「はい、できるだけこれまで通りやらせていただきます」
嫁は家事をする労働者ぐらいにしか思っていない姑ですから、まあ、当たり前の反応ともいえました。でも、それでも、嘘でもいいから、「おめでとう、よかったね」と言ってほしかった。
臨月になり予定日が近づくと、おなかが一層大きくなり、家事をするのも結構きつくなってきました。でも姑は、「休みなさい」など優しい言葉をかけてくれたり、手伝ってくれたりもしませんでした。
お手伝いさんがいることはいるのですが、姑の味方ですから、「お手伝いしましょうか」なんて言ってくれるはずもありません。主人に話して、手伝ってもらうようにできたかもしれませんが、その後の姑の仕打ちを考えると、話しても無駄だったと思います。とにかく、できるところまで自分でがんばるしかありませんでした。
いよいよ出産が近くなり入院することになりましたが、あいにく主人は仕事を休めないため、一人で準備しなければなりませんでした。入院時に持って行くものは前から準備していましたので、押し入れから出すだけでしたが、難問は布団。
昔は、今のように病院に何でもそろっているわけではなく、入院するときには布団を持って行く必要がありました。姑が手伝ってくれないのは分かっていましたが、大きなおなかをして二階から布団を下ろすのは、とてもできるものではありません。
仕方なく階段を転がして下に落とし、玄関まで持って行くという離れ業をすることに。自分でタクシーを呼んで、荷物を持って外に出ると、運転手さんが見るに見かねて、
「奥さん、私が運びますから、車に乗って待っていてください」と言って、手伝ってくれました。初めての出産で心細いにもかかわらず、何の見送りもなく一人で病院に向かう淋しさは、何ともいえないものです。
病院に着くと、運転手さんが中まで荷物を運んでくれ、感謝の気持ちでいっぱいになりました。他人でさえ、このように親切にしてくれるのにと思うと、涙がこぼれてほほを伝ってきました。
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