六 午後……十二時五十五分 ドリームアイ・ゴンドラ内
『喜劇(きげき)の幕開けは楽しんでくれたかな? びっくりさせたなら申し訳ない』
「なんてことをしたんだ、自分のやったことがわかってるのか」
そう独り言のように仲山は言葉を並べた。相手が聞く気がないと察(さっ)していても、仲山は自分自身の考えを整理する必要があった。
「『小人』、お前は何者だ?」
『君に決めたよ』
「俺の声が聞こえてるのか」
話の噛み合わなさに仲山は少し苛立った。
「お前、なんでこんなことをする?」
『これからの交渉役(こうしょうやく)は君に決めた、仲山秀夫さん。数時間の付き合いだが仲よくやろう』
仲山は眉毛をぴくりと動かした。
「なぜ俺が交渉役を?」
『これは運命が選出した答えだ』
「運命……? 十二のゴンドラにはそれぞれ人が乗っている。なぜ一つ落として、なぜ今俺を選んだ?」
『運命さ。本来、さっき落ちたゴンドラに乗っているのは君だった、そうだろう?』
「おい……なぜそれを知っている?」
それはドリームアイに乗る直前の出来事だ。仲山がジュースを老人にかけてしまって慌てている間に、中年夫婦に先に行ってもらった。そして、彼らの乗ったゴンドラが落ちたのだ。
それを知っているということは、その場にいたか、監視カメラか何かでずっと現場を見ていたか、滝口から話を聞いた警察関係者か……とにかく対象が絞(しぼ)られる。これは大きいヒントだ、と仲山は人知れず拳を握った。