それからほぼ一週間後、如月から呼び出され、桜田は舞浜駅に降り立った。如月に指定された駅地下のカフェで五分ほど待つと如月が現れた。

「ねえ、どうでもいいけど、何で四〇近いアラフォーのお姉さん達の待ち合わせ場所がよりによってきゃぴきゃぴギャルのメッカなの?」と桜田が如月に言うと

「しょうがないじゃない、広報官としての仕事の後の空き時間に会ってあげているんだから……文句言わない!」とお説教を食らった。

「広報官の仕事って?」と桜田が腑に落ちず訊ねると

「自衛官募集のチラシ配り、ノルマ一、〇〇〇枚。たぶん反応はないと思うけどこれも広報官の仕事」と言われ

「そっかー、知らずに文句言ってごめん」と桜田が如月に謝った。

「いいよ、いいよ。チラシ配り終えなかったなら、恩に着せて貴方に手伝わせようと企んでいたんだから、気にしないで」と如月は悪びれずに言った。

着席してコーヒーを注文した後、ショルダーバッグから如月が桜田に頼まれていた資料と二人の女性の連絡先を記したメモ用紙を取り出した。

「この二人なら私が任期制自衛官にスカウトした人だから、私から依頼すれば貴方に協力してくれる筈。現在一人は看護師さん。優等生を絵に描いた様な女性。

もう一人は現在キャバクラ嬢。任期制自衛官になった動機もホストクラブで散財して作った借金の返済の為だった。会える時間が都合付いたら私に言って、時間と場所は私の方で段取ってあげるから」と如月が言ってくれた。

「ありがとう、恩に着る」と桜田が言うと

「ディナー忘れてないよね」と念を押してきた。

「うん、しっかり覚えている」と桜田が頷きながら言った。

「それじゃ、私この後、打ち合わせがあるからこれで失礼するね」と言い残して如月は帰っていった。

その背中を見送りながら、看護師さんとキャバクラのお姉さんかー、どっちに先に会う事にするかー、と思案にくれていた。

【前回の記事を読む】女性刑務官の3年以内の離職率は38%。公務員の平均離職率5%程のなか男性刑務官のおよそ3倍!

次回更新は11月29日(金)、8時の予定です。

 

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