第二章 調査1、調査2、お手本は自衛隊
そこでようやく桜田が
「今、刑務所で勤務する女性刑務官のうち、採用から僅か三年以内で辞めてしまう人達が四割近くもいるの。
そして一番の離職のきっかけが結婚・出産で、中々育児休暇が取りにくい環境の中で辞めてしまう人が多いんだけど、そこに自衛隊が採用している任期制を導入する事で、出産時に三年ないし五年の育児休暇を取れる様にすれば離職者が減らせるのではないかと思うの。
育児休暇中も三年の人は六割、五年の人は四割程度の給与補償をしてあげて、キャリア継続できれば離職者は大幅に減るのではと思うの」と話すと
「なるほど、任期制採用者に三年か五年の育休取得者の代替をしてもらおうという事ね。働く女性にとってはとてもいいアイディアじゃない? うちにもその制度が欲しいくらいだわ。
うちの女性自衛官も出産を契機にした離職者が二割くらいはいるもの。時には防衛大出身者であってもあっさり辞めちゃうよ」と如月が自衛隊でも女性の離職が多いと嘆いた。
「防衛大出身でもといっても、それはご主人の給与だけでそれなりに暮らしていけるからでしょう?」と桜田が言うと
「そう、防衛大出身の女性自衛官のご主人はほぼ将官候補者だったわ。だから自衛隊の中の高級官僚ってとこかな」と如月が答えた。
「やっぱり……だと思った」と桜田が言った後
「それで、私は具体的に何をすればいいの?」と如月に質問され
「任期制自衛官の処遇に対する資料を貰えないかな? それと任期制自衛官経験者にできれば直接、体験談を聞かせてもらえるとありがたいわ。正確を期す上で二、三人紹介してほしいの、お願い!」と桜田は顔の前で両手を合わせてお願いのポーズをしてみせた。
「いいよ、ただし手数料は頂きます。どこか気の利いたお店でディナーね」と如月陽子が要求を突き付けた。
「えっ、ディナー? まー、しゃーないか。分かったわ」と如月の要求を受け入れた。