「君はデモに参加してないけど、もう覚悟ができているみたいだね」
「覚悟? どうだろう。あまり実感がわかないのかも」
行ったっきりのロケットは今どこで何をしているのだろう、と私も時々考える。
テレビの画面が最近亡くなったあの俳優の写真に移り変わった。
もうすぐ終わってしまう世界のために流すエンタメへのモチベーションを失い、
テレビは隕石と一人の死を繰り返し報道している。
そんな姿にもう恥じらいもなさそうだ。
「なんでだろうね。もう少しすればどうせ死ねたのに」
「死にたかったんだよ」
死ぬことを自覚できていれば、そんなことを思っただろうか。
「君はどうせ死ぬのに、なんで生きてるの?」
「それは隕石が落ちるってわかった上での質問?」
「まあ、あまり関係ないね」
君はどうせ死ぬ。
もし神様がいるのなら、聞いてみたい。
死を自覚できないのは、生きるためか、死ぬためか。
どちらも希望だということを、それが時々人間を苦しめるということを知っているのか。
寿命をわかったつもりでも、心のどこかに死ねないという生の余白があったからあの人は、
死という希望を抱いてしまったのではないだろうか。
「なんで生きてるの?」
こんなことを聞く宇宙人はあらわれたのに、神様は一向に私の前に姿をあらわさない。
自らが創り上げた人間の疑問に答えられないから、隠れているのだろうか。
神様にも人間の欲深さはあまりにリアルだったということか。そんなばかな。
「どうして生きているのかは考えたことないな。あえてね。どこにも辿り着けなそうだから。でも今は、見てみたいかも、隕石」
それで、隕石は落ちたの?
うん。すごい美しかった。涙が出るくらい。
そっか。でも、君は死んじゃったの?
たぶん。死んだことがないからわからない。
【前回の記事を読む】【詩2篇】「彼らと同じになれないのなら 私の恋人は私…思い浮かべる将来の私 何もかも持っているあなたは 私の永遠の憧れです」