「中国で調査をしている時に崖から落ちて亡くなったと聞いたけど、詳しいことは聞きにくかったし、知らないわ」
「そうですか。中国のどの地方とか聞いてますか?」
「昔の話でよく覚えてない。ごめんなさい」
「実は父が研究に使っていた日誌がないのですが、ご存じないですか?」
「知らないわ。どうして?」
「母が隠したのではないかと思っているんです」
「どうして隠したと思っているの?」
「その日誌を見て、僕が何か行動を起こすのが嫌で、見せないようにどこかに隠した気がするんです」
「そうなのね。そういえば、健君には考古学はやって欲しくないと言ってたことがある」
「それはいつですか、父が亡くなった後ですか?」
「いえ、もっと前からよ。亮さんが研究のために危険なところばかり行くし、何カ月も帰ってこないし、お金もかかるからと笑いながら話してたわ」
「そうですか。父の考古学の仕事部屋があるのを雅子おばさんは知ってました?」
「そうそう、そこでたまに一緒に徹夜すると言ってたわ」
「えっ、ということは母も父の調査研究を手伝ってたんですね」
意外な事実がわかり驚くとともに少し嬉しい気持ちになる。
「そうよ、さっきも言ったように、いつも亮さんをサポートしてた」