翌日、須崎は里村に電話を入れ、幸村の件を伝えるのであった。

「名前は幸村拓、年齢はお前のお嬢さんより二つ上の三二歳、東北の旧帝大卒でキャリア入省組だから将来性は保証できる。年収は現在で七〇〇万円程と言っていた。だから専業主婦が可能だ」と伝えると

「娘にとって申し分ない相手だ。ありがとう」と電話の向こうから感謝の言葉が届いた。

「お前の携帯に、俺と昨日飲んだ時のツーショット写真を転送しておいたから、娘さんに見てもらって、会う気があるかないか、判断してもらってくれ。お前が昔、俺に自慢気に送ってきた娘さんとのツーショット写真を相手に見せたら、是非会いたいと言っていた。

あっ、それと会ってみて上手くいかなくても『俺を恨むなよ』ときつく言ってあるから結果は気にするな。まずは二人を引き合わせる事に全力を注ぐ事にしよう」と須崎が言うと

「色々と気遣いしてもらって済まない」と電話の向こうで頭を下げている様な口ぶりで言った。

「何を言ってんだ、親友じゃないか。それに好青年と気立てのいいお嬢さんの幸せの為に俺の様なおじさんが一肌脱ぐのは、日本国民として当たり前だろ。特に日本の国防を担ってくれているお方の娘さんであれば、なおさらだ」と冗談を言って里村を和ませた。

「早速今晩にも娘にその青年の写真を見せてみるよ。でも前もって言ってくれたなら、写真スタジオでお見合い用の写真撮ってあったのに……その写真の方が見栄えがよかったと思うが……」と里村が言ったのに対して、

「ダメだ! 最近の見合い写真はパソコンでどんな風にも修正が利く。一重瞼を二重に、鼻はもう少し高く、顎のラインをもっとシャープに、胸はもっと大きく、という様な具合に修正できてしまうと聞いてる。こんな言い方すると叱られるかも知れないが夜のお姉さん達のパネマジ(パネルマジック)と一緒だろ。何事も包み隠さずだ」と須崎らしい答えを返してきた。

「おい! うちの娘を夜のお姉さん達と一緒にするな」と里村が返して二人の電話は終わった。

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次回更新は11月27日(水)、8時の予定です。

 

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