第二章 調査1、調査2、お手本は自衛隊
「なるほど、組み立ての仕事はその時々の情勢で雪国の農家の出稼ぎであったものが海外からの出稼ぎに替わり、派遣事業の派遣先へと変化を遂げてきたという訳ですね。そしてロボット化とEV車化により労働者にとっては狭き門となりつつあるという事ですか?」と須崎が質すと
「そうですね、最近は大学院卒の学歴の契約社員もおります。福利厚生がしっかりしているので、寮に入り、会社の食堂を利用する事で月々二万円~二万五、〇〇〇円程度の生活費で暮らせます。
そして約束の期間満了まで勤め上げると報奨金が支給されます。これはキャリアや実績が評価され支給されるので一概には言えませんが、概ね、七〇万円~九〇万円の範囲でお支払いしています。
昨今は男女機会均等により女性の契約社員さんも結構見受けられる様になってきました。しかも学歴が大卒の方が目立ちます。
そういう人は大概が奨学金の返済の為、短期間で奨学金返済を終わらせて早く身軽になりたいという動機の方が多いです」と昨今の実情を話してくれた。
「豊田さんは、自衛隊員の任期制はご存じですか? 期間工の制度とよく似ているのですが?」と須崎が訊ねてみると
「ああ、聞いた事があります。何年か前に面接官を務めた時、自衛隊の任期制に志願しようか? 期間工になろうかと悩んだと聞いた事がありましたから……」と自衛隊の任期制の存在を知っていた。
そこで須崎が「どっちが先にできた制度なのですか?」と質問すると
「残念ながらそれは分かりません。我々の期間工の始まりは高度経済成長の中での人手不足と東北等の雪国の冬季間の出稼ぎが需要と供給の関係としてマッチングした事だと思えるので、始まりは一九七〇年頃と思われます。なので自衛隊の任期制の始まりを調べれば、自ずと答えが見つかるのでは?」と答えてくれた。そしてこんな事を言い出した。
「我が国の主要産業である自動車関連就労人口はおよそ五五〇万人といわれています。そしてガソリンエンジン車一台当たりの部品点数はおよそ三万点といわれています。
これがEV車になるとおよそ一万点の部品が減る事になるといわれ、それに伴って五五〇万人の就労者のうち少なくとも約三〇万人が失業する事になるだろうといわれています。