第二章 調査1、調査2、お手本は自衛隊
早速そのホームページに入り自衛隊の任期制同様に調べてみると、こちらは差し詰め民間バージョンの期間を定めての採用システムであった。
そして「待てよ、ひょっとして模範囚の就職先に使えないかな? 収入は安定しているし、寮は完備されている。コミュニケーション能力は要らない組み立て工だ。一度訪ねてみる価値はありそうだ」とまた独り言を呟いていた。
この場でT自動車メーカーの人事担当者である豊田にアポを取り、一週間後の一四時に面談の約束を取り付けるのであった。
その上で「これは立派な公務扱いで文句ないよな。でも元同級生の自衛隊員の方は公私混同の誹(そし)りを受けかねないから、平日ではなく私の休日でアポを入れるとするか」とブツブツと言いながらそちらのアポも取り付けるのであった。
大学時代の友人の中に陸上自衛隊に入隊した友人がおり、大学時代からの親友だったのだが、その友人が転勤で、自衛隊群馬地方協力本部勤務になったと挨拶状に記されていたのを思い出したのだ。
自衛隊の地方協力本部とは自衛官募集の最前線本部で、主に県内の高校から防衛医大や防衛看護学校他、陸・海・空の自衛官候補生受験希望者を募るのがその主たる任務で陸・海・空からそれぞれ広報官という立場で自衛隊員が勤務しているのである。
須崎はこの自衛隊群馬地方協力本部次長を務める親友の里村二等陸佐に電話を入れた。
電話口に出た里村に向かって、
「おう、里村久しぶり。突然の電話で済まない。実はお前に折り入って相談したい事ができたんだが、済まんがちょっと時間を取ってもらえるかな?」と単刀直入に依頼した。
「えっ、俺に相談したい事?……どんな内容だ?」と当然の様に里村が聞き返してきた。
「自衛隊員の採用システムの任期制について刑務官にも適用できないかと思って今、色々と調査しているんだ。その協力をお前さんにお願いできないかと思ってな。
聞くところによると自衛隊地方協力本部って自衛官募集の最前線基地だと言われているだろう。そこの次長を務めるお前さんに是非協力を仰げないかと思って電話した次第なんだ」と須崎が言うと