第一章 急激な進行 首から下が動かない
【24日】
平日昼のみ嚥下食
ゼリー、ヨーグルト、粥一口大、とろみ水100㎖
すべて咽頭残留なく1、2回嚥下で摂取可能
とろみ水は、やや嚥下反射遅延あるが、咽頭深憂なし
輸血あり
もしかしたら、今月末か来月初旬に、大学病院を退院してリハビリ医院に転院できるかもしれない。「いつか」とか「近いうちに」ではなく、日程が限定されて確かになり、リハビリ医院の受け入れ決定を待つばかりとなってきた。リハビリ医院の選定は娘たちが見学しにいった。
「明るくてきれいだし、比較的若い人が多かったよ」
周りは人工呼吸器をつけた人ばかりだったから、新しい場所に行く不安より、楽しみのほうがはるかに大きかった。
リハビリ医院の受け入れ条件は「自力呼吸ができること」で、これはすでにクリアしていた。「口から食事をとること」はまだちょっと不安だったから、訓練を頑張らないといけない。
もう一つの不安は、自力で車椅子にしっかりと乗り移れるかだ。おぼつかない足を回復途中の腕でどれだけ支えることができるか、正直まったく自信がなかった。これができて立ち上がることができれば、自分でトイレに行けるのだが、まさに悲願といったところだ。
尿のチューブが取れたことで、パンツ式おむつになる。車椅子でトイレに連れて行ってもらい、バーに掴まって立ち上がり、おむつを下ろしてもらい便器に座る。用が終わればお迎えを待ち、ベッドに連れ帰ってもらう。私のトイレトレーニングの進化はここで止まったままだ。自分で済ますには、何も掴まらずに下着の上げ下ろしをするまで、自力で立っていなければならない。倒れる心配があるので、まだ試したことがなかった。でもここまできたのだから、どうしてもトイレは自力で済ませたい。
このまま寝たきりになるくらいなら、死んでしまいたいと思ったことがあった。夫は介護ができる人ではないから、娘の負担になってしまう。幸か不幸か、手足が動かなければ死ぬこともできなかった。現金なもので、手足が動き出すとそんな気持ちは薄れていった。
褒められる。