黒毛和牛のハナ
馬屋(まや)
おじいさんの家の門を入って左奥(おく)に古い土蔵(どぞう)があって、その向こうに牛が飼(か)われている馬屋(まや)がありました。どういうわけか、この地方では家畜(かちく)を飼育(しいく)する場所を馬屋(まや)と呼(よ)んでいます。純二には分からないことがありました。
「牛小屋なのに大人たちはどうして、馬屋(まや)と呼(よ)ぶの?」とあるとき、おじいさんに尋(たず)ねました。
「それはね、昔は人や荷物を運ぶのは馬車だったのだよ。だから、家畜(かちく)は馬と決まっていたので、家畜(かちく)小屋のことを馬屋(まや)と呼(よ)んでいるのだ。今は少し見栄を張(は)ってね」
とおじいさんは説明してくれました。純二は重ねて、
「おじいさんは何で、馬じゃなくて牛を使うの?」と尋(たず)ねました。すると、
「馬は牛の何倍も値段(ねだん)が高いし、エサもたくさん食べるし、気性も荒(あら)いし、力も強いから、おじいちゃんの力では馬を使うのは無理なのだ」と教えてくれました。
「牛の糞(ふん)なのに、馬屋(まや)肥(ご)えというのも同じだね」と純二が尋(たず)ねると、