会社の傲慢さで全米的な不買運動に発展 ――「米国三菱セクハラ訴訟」

禁止されている〝違法な差別〟は人種によるものだけではありません。ほかにも肌の色、宗教、性別、出身国、障害の有無、年齢による差別が連邦法で、また州や市の条例では性的嗜好をはじめ、その他合理的でない種々の差別が禁じられています。

次に日系企業が関わった性差別訴訟を紹介します。社内のセクシャルハラスメント(Sexual Harassment、以下セクハラ)に抗議して起こされた訴訟です。米国では、セクハラは性差別の一形態ととらえられています。セクハラにより特定の性(女性)の持つ機会均等の権利が奪われるからです。

セクハラは「代償型セクハラ(Quid Pro Quo)」と「敵対的環境型セクハラ(Hostile Environment)」の2つに分けられます。

「代償型セクハラ」とは、雇用主や上司がその権限を利用して、部下にとって「好まざる」性的行為に従わせることです。これに従わない従業員に対し雇用条件を悪化させるなど代償を負わせることももちろんハラスメントで、これらは雇用主である企業が責任を負うのが原則です。

もう一つの「敵対的環境型セクハラ」は、「好まざる」性的な行為や言動によってある特定(女性)の従業員にとって職場環境が不快なものとなり、他の性(男性)の従業員と同じような環境で働くことのできる権利が妨げられることにより生ずるものです。主として同僚の行うセクハラが対象となります。たとえ昇進や雇用に不利益はなくとも、職場環境や雰囲気が不当に悪化し、職務に支障が生じるような場合「敵対的環境型ハラスメント」となります。

次の例は、「代償型」「敵対的環境型」の両方の責任を会社が問われた事例です。

米国三菱自動車製造(以下、米国三菱)は、1988年、日本の三菱グループの出資により米国イリノイ州で設立された会社です。当時は年間24万台の自動車を製造し、従業員は約4000名、そのうち約800人が女性従業員でした。

男性中心の職場で、女性たちは日常的に、胸や下半身を触られたり、卑猥な言葉を投げかけられたり、セクハラを受けていました。不快な環境に女性たちはたびたび会社に改善を求めますが、会社は何も対策をとろうとはしませんでした。