二人は汗だくになって椅子に座って休憩をとる。圭がタオルとスポーツドリンクを持ってきて渡す。玲子がそれを飲みながら聞く。
「圭はいつもこのジムでトレーニングをして、体を鍛えているの?」
圭は汗を拭きながら返事をする。
「俺は週に二回、空いている時間にここでトレーニングをしているよ。玲子も今教えた体幹トレーニングを家でやるといいよ。あと、家の周りで軽くジョギングをするのもいいと思う。西鎌倉は坂道が多いだろう。軽いジョギングでも体に適度な負荷がかかり、いいトレーニングになるよ」
圭はタオルとスポーツドリンクを椅子の上に置き、目の前にある鉄棒に両足をかけて逆さにぶら下がる。
「玲子、最後に鉄棒を使ったトレーニングをするから、そこで見ていろ」
圭は逆さにぶらさがったままで両手を胸の前で組み、体をよじるように持ち上げる腹筋運動を行い、腹直筋、腹斜筋を鍛えていく。玲子が見ていると、圭の腹筋が「ギシギシ」と鈍い音を立てているように感じる。圭はその体勢で腹筋運動を五十カウント三セットして、鉄棒を飛び降りる。
「これで俺のトレーニングメニューはすべて終了だ。そろそろ帰ろう」
こうしてジムでの初めてのデートは終わった。
【前回の記事を読む】接待の場で再び顔を合わせた二人は初対面を装い、普段話すことのない話題で会話を弾ませた