ゴータマが亡くなったのは80歳の時、クシナーラーであった。クシナーラーは仏教四大聖地の一つで、今はクシーナガルと呼ばれている。夜になって着いたクシーナガルのホテルは静かで、ゆとりのある、落ち着いたたたずまいであった。

翌日、ホテルをバスで出発し駐車場でバスを降りクシーナガルの遺蹟公園に入った。すぐに公園の中央にある涅槃堂が目に入ってきた。壁は白、屋根は円筒形、1956年インド政府によって改修されたものだそうで、高さは23m‌あるという。涅槃堂の近くに2本のサーラ樹が立っていた。力尽きたゴータマが樹の間に臨終の身を横たえた沙羅双樹を思わせる。

涅槃堂の中には、身長約6mという、巨大な、ゴータマの涅槃像があった。右脇を下に右脚の上に左脚を重ね、横臥している。最初に作られたのは5世紀と想定されるそうであるが、1833年発見され、修復されたものであるという。涅槃像も、その台座も、砂岩でできているという。涅槃像には金箔が貼られ、金色の法衣が被せられ、更にその上に、半分くらい、橙色の布が被せられていた。

中田たちは先に堂内に入っていた参拝者に倣って、右回りに像を回って、足のところで腰を落として合掌した。中田たちは一回合掌してそこを出たが、アジアの仏教徒であろう他の参拝者たちは、何回も右回りをして合掌していた。

涅槃堂から歩いて20分程のところに、ゴータマを荼毘に付した跡に建てられたという荼毘(だび)塚がある。煉瓦で築かれており、高さは15m‌程あるという。荼毘という言葉が先に立ってしまうのか、中田は呆然として塚を見るばかりである。

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