第三章 カナダ国成立   

一九四一年、太平洋戦争が勃発し、カナダと日本は敵対国となった。

一九五二年、初めてカナダ人の総督ヴィンセント・マッセイが任命された。

一九六四年、イギリスの国旗「ユニオンジャック」に代わって、「赤いメイプルリーフ(大ぶりな楓の葉)」のカナダ国旗を正式なものとして決定した。

一九八〇年、『オー・カナダ』の英語訳が正式に選定され、国歌として法制化された。

一九八二年、カナダ国憲法が成立し、ようやく政体が安定した。

カナダは名実ともに真の独立国家となったのである。フランスやイギリスの植民地政策から始まったカナダ国は、英仏にとってはいつまでも植民地という意識から抜けだせなかった。そして、イギリスに長い間思うように操られていたのだ。

やっとイギリスから完全に解放され、独自の憲法で国を治めることができるようになったのだ。それは、紗季たちがカナダを初めて訪れた、わずか二年前のことであった。テレビで流れるカナダの国歌『オー・カナダ』を紗季たちもよく耳にして口ずさんでいた。

当時のカナダ人にとって、ようやく自立できたという証しのような国歌を、誇りをもって歌っていたのに違いない。もちろん多くの苦難を乗り越えてきた日系カナダ人たちも。