そのカナブンは、背中に地の国の国旗が描かれていたので、耳元へ寄せ情報を聞いた。虫の知らせにより、イムフラが出撃を開始した事を知り、エンキは水の国の王フスがいる船長室へ急いだ。

水の国の王フスは、体は細く、背もさほど高くない青年だった。目には力がなく頬はこけていた。突然勢いよく入って来たエンキはフスに向け言った。

「地の国がいよいよ進撃を決めた。今から民衆を集めるからまた頼むぞ」

そう言うとフスの肩を軽く叩いた。

しばらくすると国民はクジラ軍艦が停泊している港広場に集められた。シーバスは全ての人々に見えるように軍艦の高台の柱に縛られていた。群衆の前でフス王と共にクジラ艦の甲板に立ちエンキは演説を始めた。

「我々はついに突き止めた。この大海賊シーバスは、太陽の国の手先で、多くの海賊どもを使い、多くの人々を拉致しプラーナを抜き、太陽の国へ送っていた。我らが制圧に出ると、この国に奇病を流し抵抗を始めた。しかし安心してほしい、もう巨悪の根源は捕らえられた!」

すると群衆から拍手喝采が沸き起こり、更にエンキは続けた。

「我々はフス王の元、もう一つの巨悪、太陽の国を友好関係となった地の国と共に叩きに出る事を決意した。もう、二度とこれ以上虐げられる事がないよう、憎き太陽の国へ進撃を開始する!」