11.EGAMI 小説記憶人
水の国
その頃、水の国では、大海賊のシーバスが自分のクジラ軍艦の鉄柱に鎖で縛られている。シーバスは魚の記憶の持ち主で、巨漢な体に魚の顔が乗っていた。
シーバスが縛り付けられた柱の前で、水の国の参謀エンキによりシーバスの忠実で有能な部下、牛、エビ、カニ、タコ、モグラ、イグアナ、鷹の記憶の持ち主の七人が集められていた。
エンキは背が高く、額には変わった文字のタトゥーが彫られていた。着物のような袖が付いた軍服を着て七人に言った。
「これからお前たちには、三種の神器の一つの宝剣を探し出してもらいたい。万物あらゆる物を切る事が出来る。記憶さえも契約さえも切る事が出来る宝剣だ。海賊なら聞いた事はあるだろう? その宝剣を探し出せれば、シーバスの処刑は取り止めてやる。どうだやるか?」
「無論だ!!」
シーバスの命が懸かった七人は、シーバスを助ける為、皆承諾した。柱に縛られていたシーバスは悔し涙を流しながら、「すまぬ……、皆の者……」と部下達に向け言った。
エンキは七人の部下達に一つの宝玉から小さい宝玉を柔らかい餅のように千切り取り、それぞれに渡した。
「必ず、剣を探し出し戻ります」
七人はそうシーバスに言い、四方八方に分散し水の国から出て行く。
エンキはクジラ戦艦の船長室に戻ろうとすると、カナブンが自分の周りを飛び回っていたので、指先に停まらせる。