特攻大作戦
私は2004年以来ウォールストリートでCIAの予言プロジェクトを手伝うために、大勢リクルートした。これは9.11以後の戦略研究でテロ攻撃前のインサイダー取引に関するものだった。
予言プロジェクトではマーケットデータを使って新たなテロ攻撃を予知できる予測的分析システムを構築して、テストするためにウォールストリートの専門家を使った。
あのプロジェクトで嬉しかったことの一つは、私がウォールストリートの連中にボランティアとして参加を呼びかけたのに対し、誰1人断る者がいなかったことだ。
リクルートした大手銀行の投資責任者からヘッジファンドの億万長者まで全員が私達を助けるためにそれぞれの仕事を中断したのだった。CFIUSの使命のために再びボランティアを募るチャンスは大歓迎だった。
その後数カ月かけて私は最高といえるチームをリクルートした。
私は買収専門の弁護士、リスク裁定取引業者、内容領域専門家、未公開株取扱者など、特に中国とロシアなど脅威の源となりそうな新興国市場の周辺事情に詳しい連中に打診した。
各採用予定者に対し、私達は正式にこのプロジェクトへの参加申し出をする前に、CIA本部のランドリー少将を訪問するよう手はずを整えた。
私のお気に入りの話で、中東に強力なコネを持つコネチカットのブロンドで青眼の投資銀行家の面接のケースがある。他の採用予定者と同様、彼にとってラングリーの訪問は初めてだった。
ランドリーは茶目っ気の見せ所を知っていた。私達は訪問者を特別な本部ツアーに同行し、少将の7階の事務室を含め案内した。ランドリーは年功のお陰と他の者の敬意もあったことから、自分の部屋を自由に選ぶことができた。
ぐるっと回って、ランドリーの事務室に戻ったところで、面接が完了する。この候補者は誰の目にも欲しい人材だった。ランドリーは彼をメンバーとして受け入れることに満足していた。面接が終わりに近づいた頃ランドリーは机の中からCIAのロゴが刻印された金メッキのチャレンジコインを取り出した。彼はそれを面接相手に手渡して言った。
「これは君の訪問記念品だ。帰宅したら子供さんに見せてあげるといい」
その面接者はそれをポケットに入れ「有り難うございます。少将殿」と言った。その時、ランドリーは急に真剣になって言った。
「よし。君がそのコインをポケットに入れたからには、君は我々のポケットに入ったと同然だ」
面接者は青ざめた。
私は大笑いをこらえるのに必死だった。私は少将が新人に対してどれほどこのお芝居を繰り返しただろうと考えた。ランドリーは横目で私の方をちらっと見て、内輪のジョークに軽く微笑んだ。面接者は決まり悪そうに微笑んだ。CIAでは見栄え通りのものは何もない。