「医者が言うには、頭蓋骨とは硬さが異なる部分がある。だから白く写っている。こういう物はいずれ成長して出っ張りになる可能性があるが、悪性の物ではない、とのことだった」

もう一度、指先の感覚を研ぎ澄ましてしっかり触れてみると、そのあたりにごく小さな膨らみのような物があることに俺は気づいた。

「あっ」

その反応を見て美香も俺のおでこを触ったが、よくわからないようで首をかしげている。俺は父にもそんな物があるのではないかと思った。

「それじゃあ、父さんにも……」

俺の心が見透かされていたかのように、俺がすべてを言う前に父がその答えを先回りして答えた。

「もちろん、父さんもその後、脳ドックなどを受けた際にレントゲン写真を確認してみた。だがやはり、おまえのような印はどこにもなかった」

「それで、ぼくのことをお爺ちゃんに知らせたんだね」

「そうだ。爺さんの跡継ぎが決まったのだから、安心させてやらないとな。だが、おまえが受験生の間はそっとしておいてやってくれと頼んであったんだ。今回、おまえたちの受験が終わって落ち着いたから、早速呼び出しがかかったというわけだ」

「跡継ぎのことは、納得はできないけどわかったよ。でも、俺の婚礼っておかしいだろ? 俺には今彼女もいないし成人だってしてないんだから。それに将来の結婚相手を俺が自分で選ぶことができないなんて、今の時代ありえないと思わない?」

「ああ、確かに。いくらなんでも本人の意思を確かめもしないなんて、この時代に『親の決めた縁談』でもないだろうと父さんも思う」

俺は、このとき父がまともで良かったと思った。では、どうして祖父は……、と考え出したとき、父から思いもかけない言葉を聞くことになった。