最多安打と首位打者との関係
現在ヤクルトで活躍中(大リーグでは6年近く活躍)の青木宣親はこう述べている。
「四球を選ぶと打率はキープできるんですが、安打数が伸びない。打ちにいくと打数の分母が増えるので、凡打の次打席に安打を打ってもあまり打率が上がらないんで」(江夏豊、『強打者』ワニブックスPLUS新書)
つまり、安打数の増加を望むと打率の維持に苦労するということであろう。
次ページの表1から、最多安打王と首位打者の関係を見てみよう。
こうしてみると首位打者と最多安打王を全て同時獲得しているのは長嶋ただ一人である。(首位打者1回のみは除く)6回すべてである。おそらく目に見えない不滅の記録に違いない。イチローですら2回は最多安打王と結びついていない。張本も同時獲得は2回である。
さすが川上は、1回を除き4回同時獲得している。逆に落合は首位打者5回あるが同時獲得は1回に過ぎない。
因みにイチローそして王は、やはり他の打者とは違う。最多安打王(イチロー5回、王3回)の時はすべて首位打者を獲得している。長嶋の場合はとにかく安打をより多く打つことが4番であり、ファンの期待に応えるという姿勢が生んだ記録と言えよう。首位打者は結果に過ぎないのだ。
何でも打てた天才打者
次ページの表2は、1本打つためにどれだけ打数を要したかを、少ない打者順に示している。すなわち、この順位は長打を打つ技術のレベルを表すために筆者が算出したものである(筆者が勝手に考えた長打打率というのは、あくまで長打を打った打率である。5打数5安打でも、単打ばかりなら長打打率0である)。
長打を1000本以上打っているのは、なんと王と野村だけである。長打1本に要する打数からみると野村は落ちる。
長嶋は4位である。落合の長打数の合計は900以下で長嶋より少なく、三冠王を3度も取っているのに意外である。しかしさすがは落合、長打1本に要する打数の少なさからから見ると長嶋を抜き2位である。
一時通算2塁打数の新記録を持っていた山内は3位である。二塁打400本以上、三塁打70本以上、本塁打500本以上を打っている張本は、長打を打つためには王より2・7打数、長嶋より1・1打数多く要することがわかる。
あくまでも参考であるが川上とイチローと比較すると、長打打率はイチローが上である。イチローが4番を打ったこともあるのが、うなずける。川上の時代は本塁打が出にくい飛ばないボールであったという理由もあるだろうが、意外な数値ではある。川上の長打打率は江藤と同じ値である。
怪童と言われた中西は打数は少ないが、この中では長打打率は2位である。