最も優れた防諜とは分室化である。

私が仕事をした中で最も暗い省庁は、防諜に最も直接関わっている国家防諜部(NCIX)である。この組織は1954年から1975年までCIAの防諜の責任者であった伝説の二重スパイ狩りジェームズ・ジェーサス・アングルトンの意思を継ぐものである。

NCIXの職員は外国のスパイだけでなく、諜報共同体内の二重スパイ、裏切り者それに情報漏洩者を探すスパイハンターである。

NCIXは二重スパイらしき者(アメリカ人スパイでロシアスパイを装っているが、実はアメリカに忠誠)をも狩り出すが、その者が本当は三重スパイ(アメリカ人スパイでロシアスパイを装っているが、実は本当にロシアスパイ)であることもある。

この欺し、欺されるという形而上学はワイルダネスオブミラー(アメリカテレビシリーズ)と呼ばれる。

私は初めてNCIXを訪れた時、恥の殿堂の見学をすることができた。それは第二次世界大戦後のアメリカの最も悪名高い裏切り者達の8インチ×10インチの大きさの写真フレームが飾られた回廊であった。

殿堂に飾られた一人目は、マンハッタン計画に携わったドイツの物理学者クラウス・ファッハで核爆弾の秘密をソビエトに漏洩したために、開発競争でソビエトを有力な核パワーに育て上げた。

回廊は年代順に続き、悪名高いスパイ、ジュリウス・ローゼンバーグ、アルドリッチ・エイムズ、ロバート・ハンセン、ジョン・ウオーカー、それにアナ・ベレン・モンテスの顔写真が並んでいた。

アメリカ国防情報局に勤務したキューバのスパイ、アナ・モンテスの顔写真は特に記憶に残る。その写真は1997年に元CIA局長ジョージ・テネットから彼女が優秀賞を受け取っている写真を切り抜いたものだった。

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次回更新は10月25日(金)、8時の予定です。

 

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