俳句・短歌 句集 母娘 2020.08.12 句集「地雷の如く」より三句 地雷の如く 【第4回】 馬場 美那子 母ひとり、娘ひとり、恋たくさん。 「おひとりさま」とその母の13年を綴るドラマティック川柳句集。 自由奔放にたくさんの恋をしてきた「おひとりさま」な娘。たったひとりの肉親である母は、夫に先立たれて長かった。 ほかに身寄りのない二人なのに、喧嘩して、諦めて、また喧嘩して。恋はすれども、母は捨てられぬ。母への情愛と異性への恋心との狭間で揺れる心情が、おかしみと哀しみを込めながら五七五の17音字に込められた「絆」の物語。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 欲望の落し子泣いて生まれけり あの眉のピクつく斜度の憎たらし 胃の奥の一寸法師ペンを持ち
小説 『再愛なる聖槍[ミステリーの日ピックアップ]』 【新連載】 由野 寿和 クリスマスイヴ、5年前に別れた妻子と遊園地。娘にプレゼントを用意したが、冷め切った元妻から業務連絡のような電話が来て… かつてイエス・キリストは反逆者とされ、ゴルゴダの丘で磔はりつけにされた。その話には続きがある。公開処刑の直後、一人の処刑人が十字架にかけられた男が死んだか確かめるため、自らの持っていた槍で罪人の脇腹を刺した。その際イエス・キリストの血液が目に入り、処刑人の視力は回復したのだという。その槍は『聖(せい)槍(そう)』と呼ばれ、神の血に触れた聖(せい)遺物(いぶつ)として大きく讃えられた。奇跡の逸話(…
小説 『小窓の王』 【新連載】 原 岳 【山岳小説】あの遭難事故以来、こんなことが続いている…手の指がない。握ると、握りようもない三指の断面がギロリと露わになる 手の指がない。握ると、思い知る。拳がきつく固まらず、二の腕の筋肉は盛り上がるが、力は霧散していく。例えばこの拳で何かを殴っても、壊れるのは短い三本の指。それほどにだらけて固くない。はがゆく、青筋を立て歯を食いしばり力を込めるけれど、込める先が切れているのだからどうしようもない。それでも許せず渾身の力を込め、残っている指の爪が掌に食い込み血が滲むほどに込め続け、そのうちに疲れ果てて眺めると、握りよ…