間に合わなかった「津波警報」

(以下気象庁「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震調査報告書第1編」『気象庁技報』第133号 2012年より)

•気象庁担当:当日の担当気象台は大阪管区気象台。

•2時46分:地震発生

•2 時49分:各地の地震計で記録された地震動の最大振幅からM7.9と推定した。(広帯域地震計のほぼすべてが振り切れてしまいシステムによる自動解析ができなかった。)

•2時49分:岩手県、宮城県、福島県に大津波警報。「予想される津波の高さ:宮城県6m、岩手県、福島県は 3m」と発表。(これが後に津波による犠牲者の拡大につながったとして非難を浴びることになる。筆者注)

•3時12分:釜石沖20KmのGPS波浪計が6.7mの津波を観測。

•3時14分:これを受け、予想津波高、宮城県10m以上、岩手県、福島県6mに引き上げ。

•3時20分:米国地質調査所 M8.9と発表。(3時21分頃:岩手県大槌町、大津波が役場庁舎に到達。筆者注)

•3時30分:予想津波高、岩手県から千葉県の太平洋岸、10m以上に引き上げ。(この時点で釜石市や宮古市などにはすでに最初の大津波が到達していた。筆者注) 

岩手県宮古市田老漁港にある津波到達点プレート(2023年11月筆者撮影)下から順に ①1933年・昭和三陸沖地震津波(10m)、 ②1896年・明治三陸沖地震津波(15m)、 ③2011年3.11津波(17.3m)と記されている。

原子力発電所の炉心溶融事故が発生

•『東京電力(株)福島第一原子力発電所(大熊町、双葉 町)、福島第二原子力発電所(楢葉町、富岡町)では、震度6強というかつてない大地震となり、この地震及びその後に発生した津波により、発電所施設は大きな影響を受けた。

•地震直後、福島第一、福島第二ともに原子炉は自動停止(福島第一の4号機~6号機は定期点検で停止中)した。

•福島第一については、地震等の影響により外部電源を喪失し、また当初、非常用発電機が作動したものの、その後の津波により、6号機を除いて非常用電源も使用できない状態となり、1号機~3号機の原子炉を冷却する機能を失った。

•こうした事態を受け、3月11日19時03分内閣総理大臣が原子力緊急事態宣言を発出した。

•その後、福島第一においては、原子炉への注水ができず燃料が露出したことで、事態はさらに悪化した。炉心損傷や溶融により放射性物質が放出され、また、大量に発生した水蒸気等により格納容器の内圧が上昇した。

減圧のためのベント(排出)を実施したものの、3月12日に1号機が、3月14日には3号機が水素爆発を起こし、さらには3月15日には2号機格納容器が損傷した。』(1)


(1)福島県「東日本大震災の記録と復興への歩み」2013年3月、95頁

【前回の記事を読む】2012年の日本地震学会の見解とは。確度の高い「地震予知」は、現時点で非常に困難。

次回更新は10月13日(金)、8時の予定です。

 

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