「確かに、引きこもりでは補導歴もないだろうが……そもそも、なぜ長男だけが生きている? 殺し方も雑だ。俺が犯人なら間違いなく、確実に殺して、死んだところを確認しておく。目撃者などリスクでしかないからな。
他の三人に比べると実に粗い手法だ。想定外に堀田が現れ、死んだことを確かめる前に犯人は慌てて現場を去ったのか。だが、朝七時にチャットの会話が止まり、八時半に堀田が来たのでは時間が開きすぎている」
「その間に、父親、母親、長女を殺したのでは?」
「二階に引きこもっている人間から殺すのは順序がおかしい。それに、水死、凍死の二人はともかく、秋吉航季は、死後硬直の様子を見ても、もっと早くに殺されている。そして、この長男には睡眠薬を使われた形跡がないんだろう?」
「この点医師に確認していませんが、先に現場検証した所轄の話では、特に見つからなかったと。あと、冬加ちゃんにもありませんね」
「父親、母親にだけ睡眠薬を使い、子ども達には使わない。その理由は?」
「うーん」
笹井は首を捻った。
「大人は殺しにくい、非力な犯人かもしれません」
「そうだな。それも考えられる。容疑者から女性を外すなよ。あとは、子どもだ」
「子ども?」
何をおっしゃりたいのですか、と笹井は顔を顰(しか)めた。
【前回の記事を読む】「暗いな」…薄暗い典型的な「引きこもり」部屋で倒れていた長男
次回更新は10月9日(水)、21時の予定です。