だが、要求されれば応えたくなる私は、根っからの被虐体質なんだろう。なんとかして彼の欲求を満たしたかった。この週末を良いものにするべく、街のどこかにいる凄腕の彼女のことを想像し、自分を誇らしく思う気分を取り戻そうとした。

だが、やはり無茶な話だった。流れ落ちもしない汗をかき、時間とともに体力ばかり消耗していく。身体を反らして白い天井を見上げ、五年交際していた彼女はいつもどうしていたのかと思いを馳せた。

声を上げて、いく演技をした。そうすると彼も達し、少し眠った。

うつぶせのまま顔を上げると、開いたアルミの名刺ケースが目に入った。三つちょうど入るスペースから一つ抜けている。これの出番があったことだけが今日の成果だった。

だるい身体を起こそうとすると、局部が引きつるように痛んだ。思わず動きを止める。はじめて感じる痛みだった。なぜ、とシュウジさんに目を向けたが、彼は口を半開きにして寝入っていた。

その週末にタツマさんともしたが、疑惑が確信に変わる。以前よりも濡れにくくなっていた。無秩序な放蕩生活を続けるうちに、感性のタンクが空になってしまったのかもしれない。

それなら補うまでだった。翌週末にオレンジ色の蓋のボトルを持ってマキさんと会った。

だが、ローションも乾けば固くなるらしい。

「そういうのはジョークグッズって言うし、あんまり意味はないんじゃないの」 

ベッドの上で言われ、夜気をかき混ぜる空調の下で、七月は終わったのだった。

人は誰でも秘密を持っている。違いはそれがいくつあるかだ。