「そのアカウントは見られるか?」

「堀田さんから聞いています。ただ、夏美さんのスマートフォンは見つかっていませんから、本人のIDでログインすることはできませんね」

「交友関係が洗えないのは痛いな」

「今時は、何でもスマホですからねえ」

秋吉一家が狙われたのは何故か。怨恨である場合は、誰の交友関係からこの悲劇が起こったのか。それを推察するための大きな手がかりは失われている。

「きちんとスマホを持ち去っているんだから、猟奇的とはいえ、犯人に冷静さは残ってますよね」

だからこそ、睡眠薬の瓶の置き忘れというミスは非常に目立つ。しかしながら、それがわざとなのか忘れただけなのか、現時点では深瀬にも笹井にも推察はできなかった。

「ここが、秋吉夏美さんの遺体発見現場です」

笹井に案内され、深瀬はリビングの奥へと足を運んだ。キッチンは過剰なほど綺麗に整頓され、花が飾られていた。

シンクには水滴一つなく、コンロ周りに油汚れもまったく見当たらない。洗練されたステンレス素材のアイランドキッチンは、覗き込んだ顔がそのまま映るかのように磨かれている。

「ちょっと、病的に綺麗な感じもしますが」

「遺体は?」

「こちらです」

 

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次回更新は10月6日(日)、21時の予定です。

 

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