「あるな」

「ありますね」

「長男は生きているんだな?」

「はい、救急車で運ばれていきました。彼はこの家の二階で、首を絞められた状態で発見されています。意識不明でしたが、第一発見者の迅速かつ的確な対応により、現在は藤市民病院にて処置中とのことです」

「話を聞ける状態ではないのだな」

「はい、担当医師からは意識を取り戻すかはわからないと聞いています。今日が山場で、最悪の場合は脳死の判定がされると。つまりは植物人間のような状態になってしまうようですね。現時点で調べた限りでは、県内に親戚などもいないようで、なんと言えば良いか……彼にとっては辛い状況です」

奇跡的に助かっても、家族全員が死んでいることを聞かされる。その少年の未来を思って、笹井は悔やむような表情を作った。

笹井がまだ何か話そうとしたが、深瀬は捻(ねじ)れた髪を指でなぞりながらため息をついた。

「第一発見者はどういう人物だ?」

「女性ですね」

笹井は、手帳を開きながら説明する。

「母親の秋吉夏美の勤務先である、藤フラワーガーデンの店長です。名前は堀田(ほった)まひる。本日午前八時過ぎ、夏美さんが出勤時間になっても現れなかったので心配して、何度も電話したそうです。けれど電話が繋がらないので、自宅へ様子を見に来たところ、玄関が開いていたと。それで入ってみたら、この有り様です」

「電話が繋がらない? 電話に出ないではなく?」

深瀬の質問に笹井が頷く。

「はい」