腹腔鏡による手術は、生体に対する侵襲が開腹手術とは比較にならないほど軽微で、手術の翌日から歩行訓練を強いられるほどであり、経過が順調であれば術後一週間で退院を許される。

君の一度目の手術後はその通りの日程を消化し、退院の途次には、最寄りの駅中のレストランでハンバーグを食べ帰宅した経験がある。

今回渡された予定表にも同様の日程が示され、退院予定は手術後一週間目の四月二日とあった。緊張感の軽いのは、一度目の経験をそのままに、順調に経過すればスタスタ歩いて帰れると想定したからである。

『でもねー、十余年前の体と違って、今は、抗病力が衰えているんじゃないかなー』【知ってる佛】の独語は、幸いにも君の耳には届かなかった。

二人の若いドクターが来室した。君の担当であると名札を指さして自己紹介をされたが、名札をのぞき込むのも失礼と思い、君はベッドに座ったまま「そうですか、どうぞよろしく」とお定まりの挨拶を返した。

初対面の印象は、両人の容姿は背格好といい表情といい、ともに瓜二つに似てまさか双子ではあるまいかと疑わせた。

あとでこの両人は下部消化器外科に配属されている後期研修医であることが分かったが、この若いドクターたちの英断と奮戦があってこそ、君の危機が回避された物語はのちに記す。