一・四・四 電気伝導と電磁誘導
電気が流れやすい物体(導体)として金属や塩水などが知られています。
電気が流れるという現象(電気伝導)は、金属の中にある自由に動ける電子や、塩水などの電解質溶液の中で電離した陽イオンや陰イオンなど、電荷を持つ粒子が移動する現象です(図1─10)。
電荷による力(電気力)が及ぶ場所を電場といいます(図1─11)。
たとえば、正電荷による電場の中に正電荷を持ってくると反発する力(斥力)が生じますし、負の電荷を持ってくると引き合う力(引力)が生じます。力の大きさは電荷量と距離の逆数の二乗に比例します(クーロンの法則)。
電荷を移動させるためには、電荷を含む物体に電池などにより電圧(両端の電位差=エネルギーの差)を与える必要があります。
一秒間に移動する電荷の量を電流といいます。電荷には正の電荷量を持つ正電荷(陽子や陽イオンなど)と負の電荷量を持つ負電荷(電子や陰イオンなど)があります。正の電荷が移動する向きは電流の向きと決められており、もし、電子のような負電荷が移動するときは、電流は反対向きになります。
ある物体の両端に電位差を与えたときに流れる電流との比を電気抵抗(電気の流れにくさ)といい、電気抵抗・電流・電位差の関係はオームの法則として知られています。電気抵抗は、物体の大きさにより違うので、いろいろな物の電気の通しにくさを比較するために、電流が流れる流路の断面積が一㎡、長さが一mの物体の電気抵抗を「比抵抗」と呼びます(図1─12)。
電線に電流を流すと、その周りに磁場ができて、その向きは電流の方向に右ねじを回す方向になります(図1─13(a))。
一方、磁場に変化を与えるとその周囲に電流が流れます。たとえば、棒磁石のN極を電線に近づけると、環状電線を貫く下向きの磁場が増加するため、それを打ち消す上向きの磁場が生じるように反時計回りの電流が流れます(図1─13(b))。
同様に、導体の中に電流が流れると、その周囲に磁場が生じます。磁場が変化するとその周囲で電流が誘導されることが知られています。このような現象を電磁誘導といいます。地下も導体なので、このような電気伝導や電磁誘導といった現象が生じます。
以上説明した電気伝導現象を利用する探査が、比抵抗法電気探査です。
図1─14は、地下に電流を流して、地下の比抵抗分布に応じて発生する地表での電位差を測定する比抵抗法電気探査の概念図です。
この探査法ついては、三・五・一で詳しく説明します。
【前回の記事を読む】水の中で泳いでいる時に、地震が発生したら気が付く? 地震波の特性からみる"揺れ"の変化
次回更新は9月15日(日)、22時の予定です。