第一章 地球の診断

1-1 物理探査とは

物理探査を身近な例で説明しましょう。飛行場の手荷物検査を思い浮かべてください。手荷物の中身はX線の通しやすさの違いで、その内部を透視することができます。金属などは、X線を通しにくいので、武器になるような金属物の有無や形状を識別することができます。ここでは、X線という電磁波の一種を使い、外から見えない荷物の内部を調べています。

物理探査も同様に、地表から見えない地球の中(地下)を調べる技術です。

もう一つ外から見えない物の中を見る例を挙げましょう。皆さんは、毎年のように健康診断を受けられると思います。医師が体の表面の状態を見て、聴診器を当てて内臓の動きによる音を聴き取ります。また、X線を体の中に透過させ体内を撮影するレントゲン写真やCT検査(コンピューター断層撮影)を受けます。

また、超音波を送りその内臓による反射の強さを画像化する超音波検査、心電図や脳波などの臓器の活動により発する電気信号の記録を取ることもあるでしょう。さらに、血液検査も受けて、血液中の物質の量などから異常がないか調べます。

このようにさまざまな検査を行い、データを集めて、体の中に病気がないかを診断します。以上のように健康診断では、臓器の活動による電気信号や振動の伝播、X線の透過や超音波の反射といった物理現象を利用して、体内の様子を診断しています。

体内は、手術でもしない限り直接は見えないので、健康診断では、体内を目で見るのではなく、いろいろな物理現象を使って「診る」ことになります。

「診る」という行為は、対象について何らかの判断をするという意味が含まれます。地下も同様で、見ることはできませんが、いろいろな物理探査により地下を診ることはできるのです。物理探査は、目では見えない地下を診断するための技術です。