夫として、父として家族の知らない出来事
私は大学を卒業してから2年ほどは就職浪人でした。自宅の自室にこもり本を読んで過ごしながら、それが退屈になるとぶらぶらと外に出かけてはあちこち歩き回っていました。近所でも知らない道や場所があります。少し足を延ばせばちょっとした冒険でした。
世間から見れば、ちょっと危ないと思われていたのかもしれません。しかし、私にとっては至ってのんきな暮らしでした。両親から生活態度や将来のことについて、小言を言われたことも覚えていません。
そんな生活をしていた時、学生の頃のサークル活動で顔見知りだった中央児童館の職員から連絡がありました。近くの児童養護施設で男性職員を募集しているので、面接に行ってみないかという内容でした。
私が就職に失敗してぶらぶらしているのを、どこかで耳にされたのでしょう。まだ社会と繋がりがあったと思うと、ありがたく嬉しくもありました。
その施設では3人の男性職員のうち二人が揃って退職したそうで、定員補充を急いでいるとのことでした。働く気持ちがあるなら、すぐにでも面接をお願いするがどうかと聞かれ、もちろん「お願いします」と答えました。
私は翌日に面接を受け、その場で採用になりました。
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次回更新は9月16日(月)、21時の予定です。