プロローグ
想像してみてほしい。
あなたにとってとても大切な人が、明日死ぬとしたら……。
死というものは、どこか遠くにあると勘違いしていた。
死というのは、私たちのすぐ隣にあった。
明日自分自身が、大切な人が生きているなんて保証はどこにもない。そんなありふれた言葉だけれど、どうして私は今までもっと真剣に考えなかったのだろう。
彼は私にとってかけがえのない人だ。
「俺から離れていかないでね」と言っていたはずのあなたは……もう隣にはいない。
一樹を失うまで、その言葉の本当の意味に気づけなかった。
病死、事故死、自殺、事件などによる死や災害による死。
あらゆる形での、大切な人の人生の終わり。
残された者に残るものは、絶望や哀しみはもちろん、孤独や後悔、自責の念など様々な感情が付き纏うだろう。
どうして人は、失ってからでないと気づけないのだろう。
戻れるのならまた彼に逢いたい。
そして、声が枯れるほど、命が消えるその瞬間まで「愛してる」と伝えさせてほしい。
残された私は、これからどうしていけばいいのか……。一樹がいなきゃダメな私は、どう生きていけばいいの? 代わりに死ねなくてごめん。
もっと、いろんなことを伝えておけばよかった。