第3章   私が知っている私のこと

妻と出会う前

やっぱりそうだったのかということ以外に、何の感想も湧きませんでした。弟のほうが戸籍のことではショックだったようです。

もちろん、その後のことを思い出しても、育ての両親にも生みの親にも良くしてもらった記憶しかありません。生みの親もよく知っている人でした。今ではもう会うこともできませんが、本当に感謝しかありません。

私にとって中学も高校生活も、友達と過ごした場面や部活の思い出しか浮かんできません。中学校では陸上部と野球部に入っていましたが、レギュラーになった記憶はありません。言い訳ですが一つのことを集中してやることが苦手というか、情熱を持って何かに向かうことに変に冷めていた中学生でした。

最初に異性を意識したのは、いつ頃のことだったのだろうと振り返ってみました。忙しく働いていた頃は、そんなこと考えてみたこともありません。最近は、過去のこともよく思い出します。やはり確実に歳を重ねているのでしょう。異性を好きになるというのは、どのようなことだったのだろうかと、おぼろげな記憶を手繰(たぐ)ってみます。

「僕の友達はみんな男の子だよ。女の子は、キャッキャとうるさくて好きじゃない」

保育園の頃は、もちろん性別の違う子が周りにいるということは知っていましたが、その程度です。小学校も中学校も部活中心で、女の子のことはほとんど思い出せません。印象に残っている女の子がいなかったということでもないですが、実際は、顔も名前も忘れています。女の子を好きになるよりも他に興味があることが、たくさんあったように思います。そんな子どもでした。

そういえば中学卒業間近の頃、同じクラスだった女の子にラブレターを書いたことがありました。それほど好きだったかというと曖昧です。かといって、悪戯 (いたずら)ということでもなかったように思います。返事はあったのだろうか、あったような気もしますがはっきりしません。

結局私の中では、高校生になって私なりに異性を意識しだしたというのが気持ちの中ではしっくりします。

高校時代はバス通学だったので、同じバスに心魅かれる女の子がいました。何だか嬉しくて、そんな時は体中にエネルギーが湧き上げてくるようでした。クラスの席替えで近くになると、そのことだけで気持ちがワクワクしました。異性として意識して女の子を見るようになったのは、やはり高校生になってからです。ちょっと、成熟するのが遅れていたような気もします。