近隣に立ち並ぶ住宅の中で、わずかですが別荘としている方もいます。移り住んで初めの頃、「もしよかったら、庭の木を差し上げましょうか」と声をかけていただきました。我が家の庭木のほぼ半分が、その方の庭からお嫁入りしてきました。

妻が好きなトビシマカンゾウ、ヤマツツジ、岩百合はもう誰も住まなくなった佐渡島の妻の実家の種や苗木から育ちました。

オレガノ、ルッコラ、アップルミントは、ハーブガーデンの女性が掘り上げてくださいました。秋にはその方に頂いたコスモスも、こぼれ種で毎年咲きます。

安曇野ヒメバラは、素敵な洋館のご婦人から剪定(せんてい)枝を頂き、挿し木で育てました。純白の幹と青空のコントラストが心和ます白樺、波のような葉が涼しげなソヨゴ、電力王福沢桃介がドイツから苗を持ち帰り、ここ伊那谷から権兵衛峠を越えた先の木曽の発電所から始まったと言われる花桃。紅、白、桃色の花が1本の木に咲き競っています。

初めて目にした時は、その不思議さに心魅かれました。気品のあるリラ(ライラック)など、庭に植えたくて購入した樹木もあります。ちょっと植えすぎですが、一年中いのちを感じさせてくれるみんな我が家の大切な家族です。

いのちと言えば、庭の一角に小さな家庭菜園があります。育てるのが簡単だと、地元の方から教えてもらって小松菜の種を蒔きました。芽が出て育ち始めた頃、間引きをして片隅に寄せておきました。

風に吹き飛ばされそうな細く弱い芽たちが、数日してまた根付き立ち上がっていました。何と生命力のあることかと感激させられたことがあります。我が家では、この話題で何度も盛り上がっています。

農家の方から頂いたネギも、保存のため土を寄せておくと起き上がってきます。そんな場面に今まで遭遇したことのない私たちは、野菜たちの生きざまと生命力に教えられ励まされています。

ある日の夕方のことです。庭で木々と遊んでいると、何やら人の声が聞こえてきました。

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次回更新は9月6日(金)、21時の予定です。

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