第1章 試行錯誤の毎日─リハビリ・介護生活から現在まで─

明日への思い出作り クルーズ、引っ越し、温泉巡り 

 

これまで海外旅行は長男が小学生の頃に、家族でNBAバスケットボール観戦のためにアメリカに出かけました。次男と私でセリエAサッカー観戦ツアーに参加し、イタリアを訪れたこともあります。妻が結婚前からあこがれていたスイスにも娘と一緒の旅をしました。

息子たちに勧められ台湾に二人で出かけたことも、今となってはいい思い出です。『千と千尋の神隠し』の舞台となった九份(きゅうふん)の坂道は、多分もう再び訪れることはできないでしょう。ネパールヒマラヤへは、登山家大谷映芳さんが主宰するNPOのツアーで出かけました。

病気になってから海外旅行は無理だと思っていましたが、妻のクルーズへのあこがれをついに実現する機会が来ました。

船旅は乗船してしまえば、大きなスーツケースを旅先々に持ち運ぶこともありません。事前に船に直接送りつけることも出来ました。

クルーズを励みに病院でのリハビリを頑張っていると囁かれると、思い切って予約を入れるしかありませんでした。あまり考えすぎると実現できない理由ばかり浮かんでくるので、いい加減とは思いますがいつも何か決断する時はこれしかないのです。

娘にも一緒に行ってくれるように頼みました。クルーズの旅は初めてでしたが、妻は車椅子での不自由さをあまり感じなかったようでした。食事にも満足し船内のショーなど毎晩あり、楽しく過ごせました。また、鹿児島と韓国では車椅子持参で下船して、地元の雰囲気や食を楽しむこともできました。

クルーズから帰ったその月末が引っ越しです。その日まで、最後の準備が続きました。

私たちの引っ越しトラックが出発していきました。妻は、大学を卒業すると埼玉県で教職に就きました。その旅立ちの引っ越しを手伝ったことを思い出しました。

それから2年後に教職を離れて私と結婚することになり、二人で暮らすために借りたアパートに引っ越してきました。その時は小型トラックをレンタルして、弟にも手伝ってもらい迎えに行きました。その弟も、もう亡くなってずいぶんたちます。

そんなことを思い出しながらトラックを見送っていました。