「妻が病気になる数日前に、娘と3人で木曽駒ケ岳に観光で訪れたことがきっかけです」
私は、ほとんどセリフのようにそう答えていました。
その2017年9月24日の日記に「千畳敷までは家族で、その先は一人で歩いてみた。木曽駒ケ岳には一度来てみたかった。頂上からは御嶽や乗鞍、八ヶ岳、振り返ると南アルプスが一望できた。もう30年以上前に読んだ新田次郎の『聖職の碑』を思い出していた。帰ったらもう一度読んでみようと思う」
と書いていました。
この旅行より十数年前、一緒にボランティア活動していた若い仲間が、我が家に大きなリュックサックを背負って泊まりに来たことがあります。私がどこの帰りなのか興味気に尋ねると、彼は登山家の顔をして嬉しそうに答えてくれました。
「木曽駒ケ岳に登ってキャンプしてきました」
その時の印象的な若者の笑顔が記憶に残っています。今、彼は樵(きこり)を生業にして暮らしています。忘れられない若者です。その木曽駒ケ岳に家族で遊びにきて、その4日後に突然、妻が病気になりました。
いのちの囁き
我が家の庭は、ご近所の方に頂いた木々で賑やかです。メンバー紹介をします。
紅と白が可憐なハナミズキ、優雅に実るムラサキシキブ、はなやかに咲き集うヤマブキ、小さな白い花が風に揺れるユキヤナギ、朽ちることのない赤い実が誇らしげな南天、紅葉をひときわ華やかに装うニシキギ、春の小さな白い花は目立たなくとも、秋にはピンクの実から赤い種がつり下がり風情溢れるマユミ、春先に黄金色に燃える上がるレンギョウなど、たくさんの木々が近くの別荘の庭からやってきました。