まるで天国にある水辺みたいだった。

水の量も多くって、低い音を立てて見えないくらい上の方から落ちてくるからとっても豪快。

周りにいるだけでたくさんの水しぶきを浴びてしまうんだから。

私もけっこうびしょ濡れになっちゃた。それでもとても楽しい気分。

自然の雄大さを感じていたわ。

だけど、テツロウ君は私とは違った。

涙を流してそこに立っていたのよ。

「どうしたの?」

「生きていることを、実感できるんだ……」

「えっ?」

テツロウ君はこんな風に私に言ったわ。

「僕が本当に生きていたなら、もっとこれを違った風に感じるのだろうけど、だけど…… 。僕だってこうして感じることができた。出来たじゃないか……。でも、生きていれば…… 。生きていれば…… 。生きていたかったんだ…… 」

テツロウ君の涙は、セリャランスフォスの舞い散る水しぶきに混ざって空を流れて行ったから。

私はテツロウ君を抱きしめた。自然とそうしてあげたかったからよ。

テツロウ君は、「暖かいよ」と言ってくれた。

「生きて大人になりたかった。冒険をして世界をめぐり、大きな大人になりたかった。大きな大人に成長して、その姿をお父さんやお母さんに見せてあげたかった……」

私はテツロウ君に同情した。気持ちがものすごく分かるもの。

この場所だから来たかったわけではない。テツロウ君は、自分の生きている証を探したかったの。

だけど、見つかったものは突きつけられる現実なのかもしれないわ。

しばらく黙って滝の音と風と水を感じてその場に留まっていたのよ。

私たちは、滝に映る美しい夕日も見たの。その頃にはテツロウ君の涙は消えていた。そうしてクジラに二人で帰ったわ。

壮大な景色も、何かを私に語り掛けるようだったけど、その日はよく分からなかったの。

テツロウ君は何日か後になって話してくれたわ。

自分がどうして死んでしまったか。

私と同じように、病気だったんだって、小さい時。

「私とおんなじね」