一、壁

人と人

帰国後、そのグループの親睦会がよく開かれたが壁を壊さなかった方は参加していない。外国滞在中の言葉の壁は避けて通れないことである。徐々に低くはなるが、そのためにはその国の方との交流がなければ、無理である。努力以外の方法はないだろう。

世代間

年齢にまつわる壁は多く存在する。例えば定年制である。自営業の人はどんなに高齢となってもやる気がある限り続けられる。

でも、もうこの辺でやめようかと思うと、途端にいくつもの壁にぶつかる。後に続く人がいない時の壁は厳しい。それまで築き上げたものを壊し、自分は人生の最後の壁に向かって歩いていく。

定年制は公務員とか会社員などの定期雇用者に設けられ、これは国によって異なる。米国では定年制を設けていない。定年制の壁がない。2、3の国は米国と同じである。日本では、まだ定年制がある。

企業や自治体によって違いがあった。公立小学校長の定年も都道府県でまちまちであり、かつては56歳の県もあった。

また女性に特有の定年制があり、1969年までは、30歳としていた企業が多く、その年の裁判所は女性若年定年制は男女を不当に差別するもので、公序良俗に反するから無効と判決を下した。

女性に設けられた壁、これをどのようにして突き崩せばよいのか、今となっては当時の女性の苦悩を察するだけでも、心の痛むことである。公務員、定期雇用者の定年は次第に引き上げられたが、定年年齢は65歳である。

だが、職業によって違いがある。裁判官は65歳から70歳、議員は70歳と73歳、国立大学は60〜65歳、私立大学は65〜70歳、そして各種の団体、スポーツ界は独自に設定している。平均寿命が延びるにつれて、変更が今までなされてきている。

決められた定年に、本人、家族にとっては大きな壁として向かい合う。なんとか壊すか、取り除くか、願うだけである。あるがままに、とか、ケセラセラとか言って済ませられるものではない。

年齢の壁がどこにあるかは、その人によって違ってくる。未熟児を入れる保育器そのものは壁といっても良いし、医師はその子の年齢の壁をどのように決めるか、できるだけ遠くに決めたいとの心で、日夜努力されている。