「良かった。大人を前提にお付き合いするという理解でいいですか?」大人というのは男と女の関係のことを指すこの世界の専門用語だ。

「もちろんです」

「その場合、露骨な話で恐縮だけれど、都度三にして頂けるとお誘いしやすくて助かります。その後、二人が素敵な時間を過ごせることがわかればアップしたいと思います」

「はい。それで結構です」

あっけなく理佳子と大人の付き合いをすることになり、理佳子ほどの美人でも初対面の自分とそういう関係になることに気安く応じてくる、今はそんな時代なのかと秀司は思った。或いはたまたま理佳子がそういう状況だったのかもしれない。

以前、大阪に毎週のように出張していた折に知り合った北のクラブの幸子がこんなことを言っていたのを思い出した。

「男と女は所詮タイミングよ。たまたま私が離婚したばかりで、付き合っているパピーとけんかしている時にあなたが登場した。それだけのことなんよ」

幸子とは出張のたびに逢瀬を重ねた仲なので、そのように言われたことが若かった秀司には少々寂しく感じられたものだ。

銀座のクラブの幸恵とはそういうタイミングに出会えなかったということなのかもしれない。銀座のクラブの女性でも、タイミング次第で大人の関係を持てたり、逆に長く付き合ってもその先に進めなかったりするのだろう。

そして今、理佳子は正にそういうタイミングだった。これは秀司にとってはラッキーな話だったのだ。だがそんな理屈など、展開の早さと嬉しさに興奮した秀司にはどうでもいいことだった。

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次回更新は8月30日(金)、20時の予定です。

 

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