愛しき女性たちへ
六
理佳子と初めて身体を合わせたのは横浜のホテルだった。ティールームで待ち合わせ、デイユースを利用して関係を持った。
秀司はいわゆるラブホテルが好きではない。
もちろん過去には利用もしてきたが、大抵のラブホは通りを一本外れたうら寂しい路地に面している。入り口は目立たないように壁を建てたり樹木で覆い、出入りする人間が通行人と顔を合わせないような設えだ。
もちろん秘め事だから目立ちたくないというカップルも多いだろうが、楽しいことをしに行くのに、こそこそと何か悪いことをしに行くような気分にさせるのだ。
しかも室内は窓を覆って暗くしてあり、安っぽい装飾や照明、大きな換気扇の音。憧れの彼女との嬉しい時間を過ごす雰囲気では全くないのだ。
秀司はホテルではカーテンを全開にして昼間の陽光を室内に取り入れて、女性が嫌がらない限りは明るいベッドで女性と身体を合わせたい。
初めて触れ合う時は大抵の女性は暗くしてほしいと言うが、回を重ねると明るい中でハッキリ目を見つめ合って重なり、終わった後は陽光の中でお昼寝をしたりおしゃべりしたりする。そういう過ごし方が秀司は好きだった。
理佳子はヨガが長年の趣味だからなのか、小柄な身体だがメリハリが利いて美しく、柔軟だった。こちらのどんな要望にも応えられるような柔らかい身体で、秀司も張り切ってお互いが満足出来るような素敵なピークに向けて努力した。
しかしながら理佳子は殆ど無反応だったのだ。嬉しそうでも気持ち良さそうでもない。まるで白けた雰囲気で、秀司が終わるのを待っているかのようだった。
前パパが理佳子に避妊させていたのだろうか、大丈夫というのでそのままでフィニッシュしたのだが、そうでなかったらおそらく秀司もイケなかったと思う。
秀司の技量不足なのか、前パパによって特殊な性癖の身体に仕込まれてしまったのか、いずれにせよ初めてだから緊張したという感じではなく、いわゆる不感症なのかもしれない。