ベッドで軽くおしゃべりをしてからシャワーを浴び、同じホテルのレストランで食事をしたが、銀座でのデートの時とは打って変わって殆ど会話も進まなかった。
これには秀司も戸惑った。会話の糸口を探して楽しい話題を振るが、いかにも乗りが悪い。
疲れたのだろうか。
そういえば今日は全くの普段着だ。普通のジーンズ、すなわちオシャレな外出用のジーンズではなく、主婦が近所のスーパーに買い物に行くようなボトムスに色あせた七分袖のTシャツ。
秀司自身は、初めて関係する日だということで多少オシャレをしてきたのだが、理佳子は休日でヨガレッスンの帰りだという。それにしても二回目のデートでしゃれっ気の無い服装。
これは親しみの表れなのか、釣り上げた男への理佳子風の振る舞いなのか。ひょっとすると秀司がそれほどの男でもなかったと見切って、一回で関係を終わらせようとする意図があってのことなのかもしれない。
美人局だったのかという疑問は湧かなかったのだが。
結局たいして楽しくもないディナーを終えてその日は別れたのだが、二、三日経って「ハニーパパ」の理佳子のプロフィールをのぞいてみて驚いた。
理佳子の顔や身体、趣味だというお菓子作りや旅行先の風景などの美しい多くの写真が追加され、プロフィール文書も書き換えられて、パパを募集している。
つまり秀司は不合格だったようだ。
これには少々落胆したが、一応メールで理佳子に聞いてみることにした。
「理佳子さんの考え方を確認しておきたいのですが、複数の男性とのお付き合いを望んでいるのですか? 『ハニーパパ』のプロフィールでは今でも男性を募集しているように見受けられるのですが」