我輩は清掃人じゃ

4.第二の邂逅・第三は運命の女性の苦難?

我輩の母ちゃんは世界一、いや、人類で最も美しい女性じゃったと、我輩は、自信から確信に変わっておる。その母ちゃんと坂〇泉水は、どっこいどっこいじゃった。そして今、目の前を通り過ぎていったあのお方。

ヨッシャア、決めた。あの女性の名は、坂〇泉水ではなく、坂本泉水じゃ。似てる容姿でも、名前を若干、変えておかんと、話が面倒じゃからの。あの女性、坂〇泉水ではなく、坂本泉水じゃ。何か文句あっか!

あれはここで清掃した二日目に、初めてトイレ掃除したときか、両手が糞尿まみれになったとき、さすがにこれでは、魅力ある女性とのお付き合いなど、無理そうじゃな、と胸を痛めたのじゃった。あまりの衝撃で心が折れ、我が人生に見切りをつけたくなったときがあったのじゃ。我輩の人生、細く短い道のりになっておるのかの。いやなもんじゃ。

他人様のそれは、みながみな、楽しく意義ある人生になれば、それはそれで素晴らしいのじゃがの、我輩の人生というものは、楽しくも意義あるのかないのかわからんが、せめて恋が成就する楽しみを見つけられれば、それで満足する用意は、すでに構築されておるわけじゃからの。神様がおれば、お慈悲を与えてくれればの、それで満足するのじゃからの。お助けしてもらえんかの。

「クマ君。首輪つけてあげるのじゃ。手前に来たれい」

クマ君にしても、狭いアパートの一室で、いつもいつも寝てるだけではストレスになるじゃろと、首輪を買ってきたので、ワンちゃんみたいに散歩してあげようかと、誘ってみたのじゃ。ワンちゃんとニャンちゃんとの大きな差は、散歩をするかしないかなのじゃ。

ワンちゃんが一日あたり一度か二度の散歩は、飼い主の義務じゃが、ニャンちゃんは散歩の必要はないという。が、我輩の見解では、このクマ君でも、遊びたい盛りなので、アパートの一室で慣れてきたわけじゃから、今後の社会勉強のために、クマ君にとっての新しい試練を、テスト的に実行しようかと思ったのじゃ。まだ夕暮れどき、ビビったらすぐに帰ってこようかと思っちょる。

両目をぱっちりと開けて、クマ君がちょこちょこっと寄ってくる。めんこいのう。病気でなければいいのがの。低収入なので、動物病院での検査もしてもらってないのじゃ。クマ君に許してもらわんきゃの。いずれ初任給が入ったらの。それまで元気なままでいてもらえればの。すまぬすまぬ。申し訳ないのじゃ。

尻をついた我輩の膝にクマ君を抱き寄せると、首を押さえる。いったんその赤い首輪を大きく拡げ、顎から一気に巻く。そして人間のいう、うなじあたりでとめる。これで完成。簡単なオペじゃ。クマ君喜んで~~(笑)まだ子猫じゃし、社会の厳しさも知らんゆえ、やたらと弾ける。猫生を知らん者の特権じゃ。