筋萎縮性側索硬化症患者の介護記録――踏み切った在宅介護

待ちに待った喀痰吸引研修

(一)看護職員による痰の吸引等実施のための第三号研修

実は、人工呼吸器装着者に対する喀痰(痰が出ること)の吸引は、今までは、看護師および家族しかできないことになっていましたが「社会福祉士および介護福祉士法」の一部改正により【介護福祉士及び一定の研修を受けた介護職員等においては、医療や看護師との連携による安全確保が図られていること等、一定の条件の下で『痰の吸引等』の行為を実施することができる】ことになります。(平成二十四年四月一日厚生労働省)】

このように法律が改正されて、平成二十四年四月一日よりいわゆる『三号研修』と言われる研修を受け、その合格者については喀痰およびその該当とする医療行為ができるようになったのです。

この法律は、私たちのような人工呼吸器装着者の家族にとっては待ちに待ったことだったのです。『日本ALS協会広島県支部』で、この講習を開催してくださることになったということは、在宅介護者にとっては、素晴らしいことなのです。

私たちはこの朗報を聞き、早速わが家のヘルパーさんたちが一人でも多く受講してくださることを密かに祈っておりました。しかし、開催地が当市より片道一時間以上離れた広島市であり、しかも一日がかりということであったので、無理は言えないと思っておりました。

ところが、わが家でお世話になっているヘルパーさんの属する事業所の二か所を除き、他全部が受講をしてくださるというのです。さらに、受講しないことになっていた事業所のうちの一か所も、参加することになったと後から報告がありました。

この後から参加することになった事業所は、事業所としては反対であったが、ヘルパーさんたちがどうしても受けたいと直訴して決まったというのです。ものすごいヘルパーさんの医療に対する底力、命を支えようとしている力に人間として尊敬の念を抱きました。

この講習は、日曜日の開催であり、広島まで出かけなくてはならないので、ヘルパーさんたちには時間も費用もかなりの負担になることと思います。それを自分から進んで受講しようと言ってくださるみなさんに頭が下がりました。

この受講者のうち、広島での座学の試験に合格した者は、実地講習も受け、実際に患者に対して吸引をして、その手技を試験者が認定をして、それに合格して初めて吸引ができるということなのです。

実習できる医療行為として、口腔内の痰の吸引、鼻腔内の痰の吸引、気管カニューレの痰の吸引、胃瘻による経管栄養、腸瘻による経管栄養、経鼻による経管栄養の内の該当行為ということです。