筋萎縮性側索硬化症患者の介護記録――踏み切った在宅介護

待ちに待った喀痰吸引研修

(二)夫が人体実験台に

ヘルパーさんの中には、模擬の実験台として、自分でペットボトルに細工をして、実験具を拵えて家で練習をしてくる人もいます。とても熱心です。残念なことに、何回実技試験を受けても、緊張しているためか失敗してしまい落ちてしまった人が少しいましたが、ほとんどの人が合格できたということでした。

翌日からは、実験台ではない、言ってみれば本物の夫との対決となりました。みなさん、試験の時はあんなにこわごわしていたのに、本番では堂々とこなしていることに驚きました。すばらしいことです。これが日頃の仕事からくる自信と言うものなのでしょう。

そして、これを機に、まるで人が違ったように、自信をもって夫と対峙している様子がひしひしと見えてきました。人間というものは、自分に自信が付くと、こんなにも変わってくるものだと思いました。とても深い、素晴らしい力を身に着けたのだと思いました。これが神仏が与え給うた力だと吸痰をしているヘルパーさんが輝いて見えてしまいました。ありがとうございました。