筋萎縮性側索硬化症患者の介護記録――踏み切った在宅介護

家族は第二の患者ですか。

「家族は第二の患者って言われているんですって」

娘が日本ALS協会広島県支部の会議から帰ると、開口一番こう口にしました。

なるほど。私は言い得て妙だと感心してしまいました。全くその通りです。

夫がALS発症の宣告を受けて以来、私たち家族三人は、夫の一挙手一投足を見つめ、(今日はしっかり立つことが出来た)(尿の出方が少ない。しかも白濁していた)(少し手に震えが出て来た)などなど、どんな小さな変化をも見逃さず、大騒ぎをしてきました。

先生の往診の度に、説明を一言も聞き漏らすまいと、先生の口元に全神経を集中して、その一言一言に一喜一憂してきました。

正にわが家は、四人揃っての患者なのだと思うと、この娘の聞いてきた言葉は名言だとつくづく思いました。

夫の万能特効薬

夫には特効薬があります。それは整腸作用に限ってですが・・・。

それは今のところ効力一〇〇%の威力実績を誇っており、すばらしいものです。便秘が二日も続くと、この特効薬のお出ましとなるのです。

朝の初めの食事の際、

「今日で二日も出ないのよね。夕方まで待って出なければ、角川先生の処方くださった解剤を使うしかないわよね」

と言おうものなら、お昼を待たずして、すばらしいもののお出ましとなるのです。これが一度ならずも・・・のことなのです。

これにはヘルパーさんたちもびっくりしています。こんな霊験あらたかな薬があると、薬局さんの営業妨害となるのではといつも娘と笑っております。

その特効薬の名は言霊(ことだま)を宿すと言われている『言葉』です。

純粋な心の持ち主には御利益があるというものなのでしょうか・・・。